Act One

「Never Bendを持つ良心的な血統」として、母の父にShirley Heightsを持つIn the Wingsの系統に注目していきたいと考えています。爆発的な成功を収めた訳ではありませんが、父Sadler's Wellsとは全く異なる美しく、個性ある馬体が特徴で、モハメド殿下がオールドヴィックが不振に終わった現在とりわけ偏愛している唯一のSadler's Wellsの系統です。
しかし彼の最良の息子シングスピール Singspielでは父の血統の流れの良さは既に失われており、ドイツのどこかにいるはずのWinged Loveでは血統がいささか古めかしいく強調点に欠ける。個人的にはAct Oneに取り分け注目しています。

英国のシャドウェルスタッドにいるAct Oneは仏ダービーで1番人気、Sulamaniの2着、さあこれからという時期に引退したためインパクトが薄いのですが、これが唯一の敗戦で、ほぼ完璧に近い成績を残しています。これらの点から同期にあたるタニノギムレットと立場は似ていますが、安定感は上。大事なところで取りこぼす、という武蔵丸的な一流馬と言えるでしょうか。

Act Oneは血統面でも日本と馴染みのある背景を持っており、祖母がノエシスで、母の父がバイアモン。
つまり母Summer Sonnetはイブキパーシヴの姉にあたるバイアモン産駒という訳で、日本にいても何ら不思議はない繁殖牝馬なのです。

この巡り合わせによって生まれたAct Oneは祖母ノエシスに配置されたNasrullahをベースにしっかりとBlushing Groomを強調した配合で、ペルセポリスIIによってThe Boss系のフランス的なスピードを補完しつつ、母系がヘクタープロテクター、ラムタラで著名なRoyal Statute系ですから、Djevel、Son-in-Lawを生かしてスタミナ血統をしっかり表現している血統と評する事が出来るでしょう。
全体的にはスピード優先のきめ細やかな形態をした血統であると見ています。Act Oneはまさしく欧州の良心を感じさせる血統の代表格である、と言うべきでしょう。

種牡馬としてのAct OneはNever Bendを強調する事は世代的に進みすぎたので難しくなっていますが、もう一歩踏み込んでMill Reefをクロスさせる配合に非常に適した種牡馬であると思います。
この点でアガ・カーンが重視するDarshaanの系統との配合に必ず活躍の機会があるはずです。

「アガ・カーン血統」の場合、既にMill ReefとRivermanとの融合が意図的に試みられている訳ですから、Never Bendクロスを中心に据えた配合が既に完成されています。
I理論的には、ここでMill Reefをクロスさせれば「系列ぐるみのクロス」が成立する訳ですから、この血統面での明快な主張、メリットはまさしくアガ･カーンの理想とピタリと一致する、という点で、他の生産者に比べ一歩抜きん出る配合が可能となるのです。

また方向性を変えて、バイアモン内のBlushing Groomを強調する配合にも、忠実にその意図を表現する配合が可能となります。
この点は、例えばNashwanなどを持つ牝馬との配合にも可能性を持たせている事になりますから、欧州トレンドの流れに沿った「今ごろ感」も有している事になります。I理論的にAct Oneは、種牡馬としての可能性にも富んだ血統であると言えるのではないでしょうか。